この症状は腰椎分離症?
原因や治療法を解説!
はじめに
腰の骨(腰椎)の構造は主に身体を支えている前方部分(椎体)と脊髄神経を取り囲んでいる後方の部分(椎弓)で成り立っています。
この椎弓部分が骨折して前方と後方部分が分離するため、腰椎分離症と呼ばれています。
多くは、発育期(小学生・中学生・高校生)くらいに発症しやすいです。
成人の場合はこの発育期の疲労骨折が治癒せず、そのまま関節のようになっている状態(偽関節)のことを指します。
原因
発育期に腰椎分離症が生じる原因は、繰り返される腰椎部へ負担が原因と言われており、特に身体を反らす(伸展)、身体を捻る(回旋)で力が集中しやすいと言われています。
回旋時は回旋方向と反対側に力が集中するとされていて、回旋運動を多く必要とする右利きの野球選手やバレーボール選手には左側の分離症がみられることがあります。
腰椎分離症の分類
分離症は、進行程度により、初期・進行期・終末期に分けられます。
ここからは、その病期に沿って説明したいと思います。
分離超初期・初期
痛みは骨折による痛みで、スポーツ中・スポーツ後の腰痛が多いです。
身体を反らす(伸展)・身体を捻る(回旋)時に痛みが多いですが、骨折部の出血や浮腫が周囲の軟部組織に及ぶと腰を曲げたとき(屈曲)にも疼痛みられることがあります。
初期にはX線検査では骨折がはっきりしないしないため、MRI検査やCT検査が必要になります。
初期のMRI検査では、骨髄浮腫がみられます。
治療としては、基本的にスポーツ競技の中止し、3ヶ月~6ヶ月間硬性コルセット装着して骨癒合を目指します。
画像での変化(自験例)を見てみましょう。
MRI(STIR)
- ①初期:骨髄浮腫がみられる。
- ②1か月後:より明確な骨髄浮腫がみられる。
- ③4か月後:骨髄浮腫が軽減してきている。
(赤矢印の白くみえる部分が骨髄浮腫。逆側の正常部分は黒くみえます。)
CTlike
- ①初期:骨折部を抽出している。
- ②1か月後:骨折部がかなりはっきりしているのがわかる。
- ③4か月後:骨癒合してきているのがわかる。
分離進行期
痛みは初期と同様で骨折による痛みです。
進行期になるとX線検査でスコッチテリアの首輪といわれると特徴的な画像初見がみられます。
MRI検査で椎弓根に骨髄浮腫が明らかであれば、癒合の可能性がありますが、癒合しない方もいます。
骨癒合を目指す場合は、初期と同様で保存療法です。
癒合期間としては、6ヶ月程度必要になります。
骨癒合が難しい場合は、スポーツ休止せず、体幹装具を着用したり、内服することにより、痛みの軽減を図ります。
小学校の低学年場合、すべり症へ進行性が高いため、骨髄浮腫がなくても骨癒合を目指した治療をしたほうがいいとされています。
加齢とともに分離すべり症へ進行してしまうと、腰痛だけではなく下肢痛やしびれなどがでてしまいます。
CT検査にて偽関節を示す場合は骨癒合が困難なため、痛みをとる治療が主になります。
※スコッチテリアの首輪
分離症が進んで骨折部が離れたところが犬に首輪があるようにみえるため呼ばれています。
(自験例)
分離終末期
終末期の偽関節になると、分離部周囲に発生する炎症が疼痛の原因となり、腰に負担のかかる伸展時(上体を反らすとき)での痛みが強くなります。
終末期でもX線検査で、進行期と同様のスコッチテリアの首輪がみられます。
偽関節となっており、保存療法による骨癒合は期待できません。
保存療法においては、疼痛管理が主体となり、装具にて局所安静を行うことで疼痛軽減を図り、必要に応じて鎮痛剤の内服や注射を行います。
痛みが強く保存療法でも改善が得られない場合は手術療法の適応となります。
手術としては、分離部修復術・分離部除圧術・椎間固定術などがあります。
※分離すべり症の場合は腰椎固定術を使います。