野球肘のリハビリテーション|北戸田ナノ整形外科クリニック 北戸田 武蔵浦和 戸田市 蕨市


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野球肘のリハビリテーション

野球肘は、過度な投球(オーバーユース)や成長期の不十分な身体機能、不良姿勢や投球フォームの崩れなど、投球に関わるさまざまな要因が原因となり発症します。

また、野球肘には内側型・外側型・後方型があり、内側型が約90%と言われています。

今回は、内側型野球肘のリハビリを中心にご紹介いたします。

リハビリの流れは以下の通りです。

1)肘アライメント(肘の肢位)・可動域、不良姿勢の改善

疼痛がある場合は投球禁止とし、まずは肘伸展時の外反アライメント(肘を伸ばした時の外側へ向かう肢位)と屈曲位での尺骨内旋アライメント(肘を曲げた時に手関節が内側へ向かう肢位)を改善させることで肘の屈曲・伸展時痛の軽減を図ります。

まず、アライメントの確認方法とエクササイズの一部を紹介します。

肘外反アライメントの確認

肘を伸ばした時、手関節が外側に向いている角度が左右に差がないか確認します。

また、内側部が痛いと完全に肘が伸びきらないことがあるので、完全に肘が伸びるかを確認しましょう。

尺骨内旋アライメントの確認

肘を曲げたとき、右肘は、親指が肩についている。

左肘は、手のひらが肩につくようになっている。

右肘内側に痛みがあると、右肘のように親指が肩につく動作を痛がり、左肘のように曲げたがる。

また、症状がひどくなると、完全に肘を曲げづらくなる。

このように、肘を曲げた状態で左右差があるかを確認します。

腕橈骨筋‐上腕二頭筋間のリリース

痛みのある肘関節の前側である上腕二頭筋‐腕橈骨筋の間に痛みのない反対の指をいれ、肘の曲げ伸ばしを繰り返します。(5分程度)

上腕二頭筋および腕橈骨筋は、それぞれ、肩から肘にかけての筋肉と、肘から手関節にかけての筋肉で、肘関節を曲げる動作に関与しています。

この動作により、それぞれの筋肉が緩み、曲げやすくなりますので念入りに行いましょう。

指は最初は2本くらいから徐々に増やしていくと効果的です。

尺骨外旋モビライゼーション

尺骨を内側から触った状態で前腕を内・外側にひねります(5分程度)。

尺骨とは、前腕の内側(小指側)にある骨のことで、モビライゼーションとは、痛み・関節可動域制限の改善を目的とした徒手的な操作のことです。

痛みのない手のひらを肘内側にあて、痛みのある肘を包み込むようにして、手関節をひねります。

その際、痛みのある肘関節は90°曲げた状態に保ちます。

肘内側部に圧迫をかけながら、前腕を動かすことにより、肘関節の内側部の痛みがとれ、可動域制限の改善につながります。

2)体幹トレーニングおよびストレッチ

頭部前方突出(顔面が前に移動する)・胸椎後弯(背中の曲がり)などの不良姿勢は、肩の可動域制限および痛みの助長や誤った投球フォームによるさまざまな関節の障害につながります。

下記に示すような体幹トレーニングも重要です。

胸郭拡張エクササイズ

肋骨の下面に指をいれ、両手を胸の上に置き、両足を左右に繰り返し倒します(5分程度)。

この際、背中は完全に床に押し付け、しっかりと両膝を揃えましょう。

これにより、腹筋および大腿四頭筋が鍛えられ体幹のバランスを鍛えることができます。

また、胸をなるべく広げた状態で行うことに肺機能のupにもつながります。

体幹回旋エクササイズ(体をひねる運動)

体幹を回旋させてストレッチを行います(左右10秒×10回)。

胸椎伸展エクササイズ(背中を伸ばす運動)

ストレッチポール等をいれた状態で、腕の上げ下げを繰り返します(10回×3セット)。

前斜角筋ストレッチ(頚椎の前方のストレッチ)

鎖骨の下に指をいれ、肋骨を下に引き下げながら、斜め後方に首を動かします(左右10秒×10回)。

3)回内屈筋群・上腕三頭筋トレーニング

痛みが強いときは、筋力低下を防ぐため、負荷の軽い肘関節の等尺性トレーニング(肘関節を曲げ伸ばしせずに筋肉の収縮運動)を行います。

腫れや痛みが落ち着いてきたら、回内屈筋群およびダンベルを使用した肘関節の等張性トレーニング(肘関節の曲げ伸ばしをしながら徐々に負荷をかけて)行います。

回内屈筋群は、手関節から肘にかけての前腕の手のひら側の筋肉で、肘関節を曲げる筋肉の筋力強化を行うことにより、肘関節の痛みの軽減や野球肘発生の予防につながります。

上腕三頭筋トレーニング

等尺性トレーニング(肘関節を動かさない筋肉の収縮)

肘を曲げた状態から伸ばす方向への抵抗運動を行います(5秒×30回)。

この際、肘関節は伸ばさず、曲げたままの状態で行います。

痛みが強いときは、伸ばすのがつらいので曲げたままで行える筋力トレーニングは、痛みが強いときに行います。

等張性トレーニング(肘関節を動かす筋収縮)

うつ伏せでダンベルを持ち、手の甲を上に向けた状態で肘の曲げ伸ばしを行います(1.0kg~5.0kg程度、10回×3セット)。

主に、上腕三頭筋および前腕外側の筋肉を鍛える運動です。

上腕三頭筋を主に鍛えるときは、手関節を曲げず、写真のように平行に曲げ伸ばしを行います。

回内屈筋群トレーニング

ボールを握り、薬指・小指の抵抗運動を行います(5秒×30回)。

前腕の手関節を曲げる筋肉トレーニングを行います。

この際、痛みのない指は、肘前腕部にあて、前腕筋群が動いているのを確認します。

ダンベルを持ち、手のひらを上向きに維持しながら、小指・薬指を持ち上げます(1.0~5.0kg程度、10回×3セット)。

ボールでの運動で、うまくできるようになったら、より負荷をかけて手関節の曲げ伸ばしの練習をしましょう。

3)投球再開にむけて

肘の動作時痛・不良姿勢の改善、画像所見にて損傷部位の治癒が確認出来たら、段階的に投球強度を上げていき、復帰を目指します。

内側型の野球肘では、特に前腕屈筋群のストレッチを行い、筋力強化をすることが重要です。

急に負荷をかけすぎると痛みの原因にもなりますので、焦らずゆっくり行いましょう。

セルフケアしやすい場所ですので、少しずつ頑張りましょう。

野球肘以外でも、肘のリハビリとして参考にしていただければ幸いです。

野球肘でお困りのことありましたら、お近くの整形外科を受診し理学療法士のアドバイスを聞くと良いと思います。

執筆者のご紹介

リハビリテーション科 遠藤

理学療法士の遠藤です。
私は以前、整形外科クリニックで外来、通所、訪問リハビリに携わっていました。
症状の改善はもちろん、生活・職場環境を考えて、
その人にあった姿勢や動作を提案させていただきます。

趣味は色々あって、インドア・アウトドア両方好きです!
よろしくお願いいたします。

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