足関節捻挫
足関節捻挫は、多くの方が経験したことがあり、「自然に治る軽い怪我」という認識を持たれている方も多いと思いますが、しっかり治療しないと、スポーツにおけるパフォーマンス低下や繰り返す捻挫の癖につながり、不安定性を招くことがあります。(捻挫の放置について詳しくはこちら)
適切な診察を受け、適切なリハビリを行いましょう。
原因と病態
捻挫とは、関節にかかる外力により非生理的運動が生じ、関節の正常な可動域を超えた動きを強制されたことにより、関節を支持している靭帯や関節包が損傷することです。
足関節では、前距腓靭帯が損傷されることが最も多い病態です。
スポーツのほか、歩行時、段差、踵の高い靴、サンダルを履いて生じることがあります。
画像出典
- 日本整形外科学会:「足関節捻挫」より引用
捻挫の分類
靭帯の損傷程度により、捻挫は三段階に分類されます。
- 1度捻挫:靭帯が軽く伸ばされた状態
- 2度捻挫:靭帯の一部が切れている(部分断裂)
- 3度捻挫:靭帯が完全に切れる(完全断裂)
患部の腫れ、熱感、痛みに加え、重度になると、可動域制限や不安定性がみられ、歩行困難になります。
2度や3度捻挫になると、皮下出血がみられ患部の腫れも徐々に大きくなってきます。
診断
足をひねったという訴え、外くるぶしの前や下の圧痛(押すと痛み)、腫れ、皮下出血の有無で診断可能です。
X線検査で骨折の有無を確認し、エコーで靭帯損傷の有無および程度を確認します。
エコーで靭帯部を観察しながら、靭帯にストレス(足関節を前後方向に動かす)を加えると靭帯の緩みの程度を把握することができます。
治療と予防
軽症な場合は、炎症が収まる前に、再び足首をひねることが無いように、簡単に着脱可能なサポーターを使用することがあります。
サポーターには、バンドを使用し、足首を8の字に巻くものや内外側に支柱がついた比較的固定力のあるものもあります。
1度捻挫と2度捻挫では、応急処置の基本とRICE処置を行います。
3度捻挫では、RICE処置を行い、2~3週間程度固定(ギプスやシーネ)することがあります。
また、不安定性の強いものには、手術を行うことがあります。
※RICE処置
RICE処置とは、下記の頭文字をとった名称です。
- R(Rest:安静)
- I(Ice:冷やす)
- C(Compression:圧迫)
- E(Elevation:挙上)
近年では、RICEに、P(Protection:保護)を加えたPRICE処置と言われることもあります。
リハビリテーション
足関節捻挫で最も多い外側靭帯損傷(前距腓靭帯損傷)は、足関節痛や不安定性といった症状が約30%残存すると言われています。
以前は、数週間の固定後、運動療法というのが主流でした。
しかし、最近では受傷後、運動療法介入を行うことの重要性が明らかにされつつあります。
当院では、医師の指示のもと、必要に応じて理学療法士が足関節の状態を把握し、適切な運動療法プログラムを提供しています。
主な運動療法プログラム
- 関節可動域改善(足関節の動きを改善します。)
- 荷重練習(怪我した足にかける重さを徐々に増加していきます。)
- 下肢筋力トレーニング
- 体幹トレーニング
- バランストレーニング
など行い、捻挫はしっかりと治しましょう。
「ただの捻挫、されど捻挫。」
足関節をひねり痛みがある。足関節の痛みがなかなかとれない。足関節がグラグラしている。などの症状をお持ちの方は、軽く考えず、まず一度整形外科を受診してみましょう。