骨粗鬆症
骨粗鬆症(骨粗しょう症)は、こんな病気です。
寝たきりや要介護になってしまう可能性もあります。
骨粗鬆症は加齢や閉経などの原因により骨が弱くなる病気です。
骨量(骨の量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなってしまいます。
背中の骨が徐々につぶれると、背中が丸くなります(いわゆる腰曲がり)。次第に姿勢が悪化し、背中、腰の痛みを感じ、運動量や活動量が低下してしまいます。
結果として、身体全体が弱くなり要介護や寝たきりに繋がってしまう恐れがあります。
また、太ももの付け根の(大腿骨近位部)骨折を起こし寝たきりになることもあります。
近年、日本では、約1300万人以上の骨粗鬆症患者さんがいるといわれており、高齢化に伴ってその数は増加傾向にあります。
骨の新陳代謝は常に行われています。
そのバランスが崩れ骨粗鬆症は引き起こされます。
骨は、常に古い骨が壊されて(骨吸収)、新しい骨がつくられ(骨形成)、少しずつ置き換わって新陳代謝が行われています。
骨粗鬆症患者さんは、古い骨が壊される量が増えて、新しい骨を作る作用が追い付かなくなり、このバランスが保たれなくなって、骨がスカスカになります。
骨量は、およそ20歳でピークを迎え、その後徐々に減少していきます。
また、閉経後は、女性ホルモンが減少し、骨量を急激に減少させるため、女性に多い病気です。
このため、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています。
骨粗鬆症になると、骨折しやすくなります
引き起こされてしまう脆弱性骨折
骨粗鬆症になっても、痛みはないのが普通です。
しかし、転ぶなどのちょっとしたはずみで骨折しやすくなります。このわずかな外力で生じる骨折のことを脆弱性骨折といいます。
主な脆弱性骨折(部位)は、
- せぼね(胸椎・腰椎圧迫骨折)
- 太ももの付け根の骨(大腿骨近位部骨折)
- 手首の骨(橈骨遠位端骨折)
- 肩の骨(上腕骨近位端骨折)
などです。
骨折の予防と再発予防
そして、一旦骨折を起こすと、次の骨折が起こる危険性が高まることが分かっています。
従って、骨粗鬆症の治療では、最初の骨折を防ぐことも重要ですし、また残念ながら骨折を起こしてしまったら、その次の骨折を予防することも重要です。
とくに、骨粗鬆症患者さんが転倒し、大腿骨頚部骨折を起こした場合、手術や長期間のリハビリが必要となり、退院後も思うように動けない場合もあります。
寝たきりや要介護の可能性
そのような生活はさまざまな機能に支障をきたし、そのまま寝たきりや要介護となってしまうことも少なくありません。
令和1年構成労働省の調査によると、性別にみた介護が必要となった主な原因は、男性は「脳血管障害」26%、女性は、「認知症」19%でありました。
「骨折・転倒」および「関節疾患」を合わせた『骨粗鬆症関連』が、男性では、9%、女性では、なんと、32%と第1位であることがわかります。
このことよりも、特に女性は、日頃から、骨折予防および定期的な骨密度測定を行い骨のケアが重要です。
骨粗鬆症が進行した場合、ご自身の生活が制限されるばかりか、ご家族にも大きな影響を及ぼすことになることがあります。
性別にみた介護が必要となった原因
図:令和1年国民生活基礎調査より
自分でできる骨粗鬆症の自己評価ツールのご紹介
骨粗鬆症のリスク、または骨粗鬆症による骨折が起きている可能性があるか、ご自身で・ご自宅で簡便にチェックする方法を3つ紹介いたします。
骨粗鬆症の診断は、以下のように行います
骨粗鬆症の検査
① X線(レントゲン)検査
胸椎・腰椎圧迫骨折の有無や骨の形や濃さをみます。
② 骨密度検査
骨の量や成分(骨密度)を測定するためには、
- DXAデキサ法(2重エネルギーX線吸収法:測定したい箇所に2種類のX線を当てて骨をスキャンすることによって骨量を測定します。当院では、この方法を用いて、最も脆弱性骨折が多い腰と大腿骨の2か所の骨密度を測定します。)
- MD法(手のX線写真を撮影し、陰影濃度から骨量を測定します。)
- 超音波法(かかとの骨に超音波をあてて骨量を測定する簡便な方法で主に検診で用いられます。)、といった方法があります。
当院では、GE製のchlraleという機械を用いて、精度が高く、誤差が少ないDXA法よる精密検査を行っています。
測定にかかる時間は10分程度で、患者様には横になっていただくだけで検査ができます。負担が少なく、短時間で済むというのも特徴になっています。
③ 骨代謝マーカー検査
血液検査や尿検査によって、骨がつくられている程度や骨が破壊されている程度をするマーカーを調べます。
それにより、骨の新陳代謝のバランスを知ることができます。
骨を健康にする栄養素
骨粗鬆症は予防が大切な病気です。
食事に気をつけることは、骨粗鬆症治療の第1歩です。
- タンパク質
骨の半分はたんぱく質でできているので、骨を作る材料になります。肉、魚、乳製品、大豆に多くふくまれます。 - カルシウム
骨の材料となります。乳製品や小魚や葉物などに多く含まれます。多くのカルシウムを一度に摂取するより、毎日かかさず摂取するように心がけましょう。 - ビタミンD
カルシウムの吸収を助けます。魚や干しシイタケに多く含まれます。※日光にあたると体内でも合成されます。日光浴はおすすめです。 - ビタミンK
骨へのカルシウムの沈着に必要なたんぱく質の成熟に促します。骨質に関与していると言われています。ほうれん草や納豆に多く含まれています。
適度な運動によって、骨は強くなります。ウオーキングやストレッチなど、できることからはじめましょう。
転倒に注意しましょう。日頃から整理整頓に心がけ、つまづくものを置かないようにしましょう。
また、脱衣室や浴室、トイレに手すりをつけたり、階段に滑り止めを設置するなど工夫されると良いと思います。
喫煙やアルコールの摂取しすぎは、あまりよくありません。控えるようにしましょう。
特に、閉経後の女性には定期的な整形外科での検診をお勧めします。
骨粗鬆症の治療薬にはさまざまなお薬があります
骨粗鬆症の治療薬には、内服、注射、カルシウム薬、骨を作るのを促す薬、骨が壊されるのを抑える薬などさまざまあります。ご相談ください。
骨粗鬆症は、放っておくと日常生活に支障をきたすようになり、場合によっては寝たきりの原因にもなります。
心あたりのある方は、まず検査をうけてみましょう。